2007,10,30, Tuesday
手つき三段
テレビの将棋番組を見られたことがあるだろうか。
プロ棋士が将棋を指す(将棋は「打つ」ではなく「指す」と言う)時の手つきに気をつけていただきたい。人差し指と中指の間に駒をはさんで、ピシッっとマスの中に打ち付ける(中には静かに置く人もいる)ように指す。実に美しい。 私は、若い頃あれにあこがれて何度も練習した。もちろん将棋の勝負にもこだわったが、あの手つきにもあこがれた。その結果が手つきだけはすばらしくきれいになった。しかし、勝負のほうはからっきし強くなれなかった。それで「手つき三段実力初級」と言われた(泣) プロの棋士の手つきがかっこよいのは、手つきの練習をしたからではなく、将棋の勉強をしてきたたまものである。先人が指した将棋の記譜を見て何千局、いや何万局と並べてみる。そうした勉強の結果なのである。実はかっこうだけまねても仕方がないのである。 音楽の場合はどうか。音楽の場合は格好だけまねするなどと言うのはほとんど不可能である。不思議なことだが(不思議もないのだが)、すばらしい演奏をする人はたいてい演奏している姿も美しい。逆に言えば、美しい姿で演奏している人は、演奏もすばらしい。下手なのに格好つけている人がたまにいるが、そういう人はやはりよく見ると演奏する姿もぎこちなく、滑稽でもある。そういう「演奏家」を何人か知っている(観客は笑いをかみ殺して坐っている)。 お前はどうだと言われても、何にも困らない。 私は自分のことを音楽家と思ったことなど一度もないので。 |