2008,12,04, Thursday
翼なんかいらない
授業で「翼をください」(山上路夫作詞・村井邦彦作詞)を大学生と歌った。この歌を知らない大学生はいないようだ。嫌いな曲ではないし子どもたちにも人気がある。しかしこの曲が教材になっていることに昔からどこかに違和感を感じてきた。もう30年以上も小中学生に歌われてきたが、もともとは「赤い鳥」というフォークグループが歌っていた曲である。
おとなが歌っているのはまだいいが、子どもが歌うとおかしい。願いごとは「翼がほしい」、そして「悲しみのない自由な空へ翼はためかせ行きたい」。もしそんな気持ちをいつも抱いている子どもがいたとすればその子は不幸である。子どもにそんな気持ちを味わわせてはいけない。 いや、子どもたちは自分自身はそうは思わなくても、そのような気持ちを抱いている人がいることを知って、その人々にシンパシーを感じているのだとも言えるかもしれない。しかし、子どもにそのようなシンパシーを感じさせてもいけない。絵空事ではなく、現実としっかり向き合って生きる子どもに育ってほしい。 などと考えてみたが、とりこし苦労のようだ。そもそも「悲しみのない自由な空へ」などという言葉の意味を本当に考えて歌っている人など、教師にも子どもにもいない。ちょっぴり甘ったれた歌詞とメロディーとコード進行に酔っているいるだけだ。それはそれでまた問題である。 この歌を聴いたり歌ったりすると、小中学校の音楽教育は、もう30年ほど何もかわっていないような気がする。小中学校で歌われている歌は、共通教材をのぞけばほとんどがこの「翼をください」調合唱曲である。子どもたちの精神も音楽的感覚も甘やかされている。 ついでに、私の精神も音楽的感覚も。こういう曲を教材にしているととても楽である。 |
コメント
「翼をください」は赤い鳥のオリジナルより、
教育芸術社の『混声合唱曲集 山のいぶき』(1973年)に載った編曲のほうが はるかに有名になったように思います。 オリジナルには、いま〜、富とか〜 なる歌詞はありません。 リズムや尺もオリジナルと異なります。 >>小中学校で歌われている歌は、共通教材をのぞけばほとんどがこの >>「翼をください」調合唱曲である。子どもたちの精神も音楽的感覚も >>甘やかされている。 30年前もひどかったけれど、和声的な処理といったような技術的な ことに関しては職人技が活きていました。 最近のは素人芸ばかりです。
| 石原真 | URL | | 1970/01/01 09:00 AM | 69Ga3mBY |
旅行に出ていてお返事が遅れました。
> オリジナルには、いま〜、富とか〜 なる歌詞はありません。 私は、オリジナルを最初に聴いた人間です。 たしかに「いま〜、富とか〜」はなく、2コーラス目はい「子どもの時、夢みたこと」からはじまります。 > リズムや尺もオリジナルと異なります。 「尺」って何ですか? (訊くは一時の恥、訊かぬは一生<残りは少ないが>の恥)
| 吉田孝 | URL | | 1970/01/01 09:00 AM | d2tgLU0c |
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